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What's New

2017年02月18日

犬の鼻をまねたにおい検知 ●nature Communications  2016年12月1日

3Dプリンターで犬の鼻をまねることで,におい検出装置の感度が飛躍的に向上した。
 空港の搭乗ゲートには,火薬などの危険物質のにおいを検出する装置がある。アメリカ国立標準技術研究所のステイメイツ研究員らは,この検出器の感度を飛躍的に向上させる方法を考え出した。
 研究員らが着目したのは,すぐれた嗅覚をもつ犬の動作だ。3Dプリンターを使って犬の鼻をまねた吸気口を製作し,これにポンプをとりつけて犬が「くんくん」とにおいをかぐ動作を再現した。すると検出器の感度が最大18倍にまで高まったのだ。犬の鼻から出た息が対象物に当たって流れるとき,その周囲の空気は逆に引きこまれるようだ。この空気の動きによって,におい物質が吸気口の近くに引き寄せられるのだという。
 犬の鼻をまねた装置は手持ち式の検出器にも簡単に応用できる。この装置を導入することで,火薬のほか,麻薬や持ちこみ禁止の植物のごく微量なにおいの検出が可能になるだろうと,研究員らは話している。

2017年02月15日

巨大ダイヤが語る地球深部 ●Science 2016年12月16日号

地球深部のマントルには,さまざまな金属がとけた環境があることがわかった。
 地球の内部はいったいどんな環境なのだろうか。地球の中心部の「核」は,金属の固体や液体で構成されていると考えられている。一方,核の周囲の「マントル」にはさまざまな環境があるとされているが,よくわかっていない。
 ダイヤモンドは,マントルの高温高圧な環境で形成されたあと,火山噴火によって地表に届けられる宝石である。とくに巨大なダイヤモンドは,酸素がない,金属の液体の中でできるとされている。
 アメリカ,宝石研究所のスミス博士らは,巨大なダイヤモンドとして有名な「カリナン」に似た特徴をもつダイヤモンドを調べた。
 すると,鉄,ニッケル,炭素,硫黄からなる溶融物があり,さらにその内部には,メタンと水素の層があった。マントルの深さの超高圧下でできる鉱物もあった。
 これは酸素がほとんどない環境で金属が液体だったことを意味するという。ダイヤモンドは直接調べられない地下の情報を保存しているのだ。

2017年02月11日

地位と免疫の関係 ●Science 2016年11月25日号

社会的地位が,免疫のはたらき方に大きな影響をあたえることがわかった。
 社会的地位は疾患や寿命に影響をあたえるとされているが,そのしくみはよくわかっていない。
 アメリカ,デューク大学のスナイダー=マッケラー博士らは,アカゲザルを用いて研究を行った。まず博士らは,45匹のサルを九つのグループに分け,グループ内に序列ができたことを確認した。そのあと,全グループの1位と2位をそれぞれ集めてグループ化し,グループ内で序列がふたたびできることを確認した。
 そして,序列と免疫機能との間に関係性があるかを,各個体の細胞を使って調べた。その結果,一つ目のグループでも,二つ目のグループでも,序列が低いサルと序列が高いサルでは,免疫細胞数や,遺伝子のはたらき方,体内で情報が伝わる径路などがことなっていたことから,社会的地位が免疫系に大きな影響をあたえることが示された。
 アカゲザルと近縁種であるヒトにも同様のメカニズムがあるかもしれないと博士らはのべている。

2017年02月08日

仲間を尻で判別する ●PLOS ONE  2016年11月30日

チンパンジーは,人間の顔認識と同様に,尻で個体を識別する。
 人間は,たがいに顔を見ることで家族や友人などを見分けている。このような人間の顔認識には,「倒立顔効果」とよばれる特徴がある。顔をさかさまにすると,とたんに判別がむずかしくなるのだ。この現象はほかの物体ではおきないので,人間が顔を見分けるときに特別なしくみを使っていることを意味している。
 オランダ,ライデン大学のクレット博士らの研究グループは,チンパンジーがたがいの尻の形を判別できることに注目して,チンパンジーの尻認識にも倒立効果があるのかを調べた。5頭のチンパンジーに尻の画像を見せると,さかさまの尻を判別するのに,時間がかかった。
 チンパンジーは,人間が顔を認識するのと同様のしくみで,仲間の尻を判別しているようだ。人間が社会生活の中で尻をかくすようになったことで,個体識別の目印は尻から顔へ変化したようだ,と博士らは話している。

2017年02月04日

安全で効果の高いワクチン ●Science 2016年12月2日号

感染するが増殖しないインフルエンザウイルスを作製することに成功した。
 インフルエンザウイルスやエボラウイルス,エイズウイルスなどの発症を予防できる,効果の高いワクチンの開発が望まれている。感染して免疫をしっかり活性化しつつも,症状をおこさないウイルスが作製できれば,効果の高いワクチン開発へ応用できそうだ。
 中国,北京大学のシ博士らは,ウイルスが増殖する際に必要な遺伝子の途中に,「停止」を意味する“文字”(終止コドン)を導入したウイルスを人工的に作製した。このウイルスは,普通の細胞には,入りこんで感染できるものの,増殖はできないので,症状をおこさないと期待できる。
 このウイルスをマウスやブタなどに投与したところ,さまざまな種類のインフルエンザウイルスに対する免疫を活性化できた。なおこのウイルスをワクチンとして“増産”したいときには,人工的に導入された文字を無視できる特殊な細胞を用いる。博士らは,この手法はウイルスのワクチンを作製する際に有効だろうと語っている。

2017年02月01日

火星のかつての池を発見 ●Jet Propulsion Laboratory News  2016年12月13日

キュリオシティによって,クレーターが生物の生息できる環境だったとわかった。
 2012年に火星のゲールクレーターに到着したNASAの火星探査車キュリオシティは,昔,そこが生命が生息するのに適した場所であったかどうかを調べている。
 キュリオシティはクレーターの中央にある山を登りながら物質調査を行った。すると山の斜面に沿って岩石の構成がかわっていくことがわかった。山の上部ほど鉄の酸化が進んでおり,臭素が含まれる割合が高かったという。臭素は水にとけやすく,鉄の酸化度は水の存在に大きく影響をうける。研究者らはかつて地下水がクレーターの底にたまる過程でこのような分布ができたと考えている。
 場所ごとに物質の分布がことなるとき,物質の間に化学反応がおこることがある。地球の深海には,このような化学反応を利用してエネルギーを得ている微生物がいる。もしクレーターに生物がいたとしたら,物質の分布のちがいを利用していたかもしれない,と科学者たちは考えている。

2017年01月28日

ローマ帝国崩壊の原因? ●Current Biology 2016年12月5日号

ローマ帝国時代の南イタリアでは熱帯熱マラリアが流行していた。
 古代文明においてマラリアが猛威をふるっていたことは歴史的な記録から明らかである。とくに,ローマ帝国がマラリアによって壊滅したという説は根強く支持されてきている。しかし,1~5世紀の古代ローマ帝国時代において,人々がほんとうにマラリア原虫に感染していたのかはわかっていなかった。
 イタリア,パドヴァ大学のマルシニアク博士らは,1~4世紀のローマ帝国時代の南イタリアの共同墓地に埋葬された58体の成人の遺体を調査した。
 博士らは,遺体の歯からDNAを抽出して,マラリア原虫のDNA配列情報と照合・分析した。その結果,1~2世紀の2体のDNA情報に,熱帯熱マラリア原虫のDNA配列と合致するパターンがあることがわかった。
 博士らは,古代ローマ人が熱帯熱マラリアに感染していたことをはじめて直接的に特定できたと語っている。

2017年01月24日

ピラミッドを透視 ●SCAM PYRAMIDS MISSION Press Release 2016年10月15日

宇宙線の一種「ミューオン」を用い,クフ王のピラミッドの内部空間をとらえた。
 エジプトで最大のピラミッドは,ギザに建造されたクフ王(紀元前2579?紀元前2556年)のものである。その内部には未確認の部屋や空間があるとされ,これまで多くの研究者たちが,そのなぞの解明に挑戦してきた。
 エジプトの考古省やカイロ大学,名古屋大学などからなる国際共同チームは,クフ王のピラミッドの透視に成功した。透視には宇宙線(宇宙由来の放射線)の一種である「ミューオン」という素粒子が利用された。透視技術を運用した名古屋大学のグループによると,上空から地球に降り注ぐミューオンを写真フィルム上に記録することにより,レントゲン撮影と似たしくみでピラミッド内にある空間がとらえられたという。
 今回の成果は,「ミューオンを用いて非破壊で遺跡内の空間を探しだせることを示しており,今後の考古学的調査に多大な貢献をもたらすだろう」と名古屋大学のグループは考えている。

2017年01月20日

ゲノム編集を治療に応用 ●nature News 2016年11月15日

免疫細胞の遺伝子を改変して,がん細胞への攻撃性を高めることに成功した。
 10月28日,中国の西中国病院において,「ゲノム編集」でつくられた高い攻撃性をもつ免疫細胞を,肺がんの患者に投与する臨床試験が行われた。
 ゲノム編集とは「CRISPR/Cas9」などの人為的に合成したタンパク質などからなる分子を使うことで,遺伝子を切断したり,新しい遺伝子を挿入したりする技術だ。
 がん細胞は,免疫細胞の表面にあるタンパク質である「PD-1」に結合する物質をもつ。PD-1にこの物質が結合すると,がん細胞は免疫細胞から攻撃されにくくなる。臨床試験を主導した中国,四川大学のヨウ博士らは,ゲノム編集で遺伝子を改変し,PD-1をもたない免疫細胞をつくった。がん細胞はこの免疫細胞と結合できないため,この免疫細胞は本来の機能を発揮するという。
 今のところ,臨床試験の経過は順調のようだ。2017年には,肺がん以外の患者へも同様の臨床試験が行われる予定である。

2017年01月15日

惑星の形成現場を目撃? ●ESO Photo Release 2016年11月9日

赤外線観測でみつかった円盤の内部では,惑星形成が今進行中かもしれない。
 生まれたばかりの恒星は,その周囲にガスやちりでできた円盤(原始惑星系円盤)をともなう。この円盤の中で,惑星が形成されると考えられている。星の誕生から数百万年後には,円盤の内部のガスやちりが少なくなる。これは,円盤中のガスやちりが,惑星の成長についやされたためにおきている可能性がある。
 オランダを中心とする共同研究チームは,チリにある超大型望遠鏡「VLT」に搭載された「SPHERE」というカメラを使い,円盤内部のガスやちりが少ない時期の三つの原始惑星系円盤を赤外線でとらえた。中でも天体「HD 135344B」には,影のような線が円盤中に複数あり,その一つは数か月の間に形を変化させていることがわかった。これは,惑星形成が今まさに進んでいることを示唆しているという。
 こうした観測により,形成中の惑星が置かれている環境が明らかになっていくことが期待される。

2017年01月14日

アサガオの動く遺伝子 ●nature communications 2016年11月8日

アサガオの全遺伝情報を解読し,多彩な品種をもつ原因の解明に成功した。
 アサガオは,さまざまな交配により,1200種以上の品種がつくられてきた。これは,植物の中でもとりわけ多い。それを可能にした原因を探るため,アサガオの「ゲノム」を解読する研究がつづけられてきた。
 ゲノムとは遺伝情報全体のことであり,細胞核のDNA分子の中に,4種類の塩基を“文字”としてしるされている。この塩基の並び方を網羅的に調べることが,ゲノム解読である。
 基礎生物学研究所の星野敦助教らは,「東京古型標準型」という品種のアサガオのゲノムを解読した。その結果,「トランスポゾン」とよばれる動く遺伝子が,339個も含まれていることがわかった。トランスポゾンは,ゲノムの中を移動することで,塩基の配列を書きかえて突然変異を引きおこす。これほど多くのトランスポゾンを含んでいることが,アサガオが多彩な品種をもつ原因になったと考えられる。

2017年01月11日

抗がん剤の延命効果は限定的 ●The BMJ 2016年11月9日号

がん患者の生存率は,早期発見できるかどうかで大きく変わってくるようだ。
 この数十年で,がん患者の生存率は非常に高くなった。イギリス,インペリアル・カレッジ・ロンドンのワイス医師は,生存率の向上に何が大きな影響をあたえたのかを検討した。
 まず,2004年に行われたアメリカとオーストラリアのがん患者(血液のがんを除く)25万人の5年生存率における抗がん剤の効果の解析結果を総括した。それによると,抗がん剤による十分な延命効果があったのは,全体の約10%程度である希少ながんに対してのみだった。肺がんなどの主要ながんに対しては,抗がん剤によって得られる生存期間の延長効果は,平均で3か月程度しかなかった。
 博士らはこの結果から,がん患者の生存率の向上には,抗がん剤の効果よりも早期発見の影響のほうが大きいと推測している。現在,抗がん剤の開発時には,腫瘍の進行をおさえる強さが重視されている。今後,生存率の向上に効果のある薬を開発できる治験の実施方法の検討が必要となるだろう。

2017年01月07日

神経がのびてかゆくなる ● nature immunology 電子版 2016年11月21日

大気汚染により,皮膚のかゆみが引きおこされる原因が解明された。
 およそ15?30%の子供がかかるアトピー性皮膚炎は,皮膚の炎症により,かゆみが引きおこされる病気だ。大気汚染がアトピー性皮膚炎の患者をふやし,症状を悪化させるといわれているが,そのくわしいしくみは不明だった。
 東北大学の日高高徳博士らは,大気汚染物質によって活性化された「AhR」というタンパク質が,皮膚のかゆみを引きおこすしくみを解明した。まず,AhRが「アルテミン」というタンパク質をふやしていた。そして次に,増加したアルテミンのはたらきにより,かゆみを感じる神経が皮膚の最表面である表皮へとのびていたのだ。すると,人間はかゆみを強く感じるようになり,皮膚をかいてしまう。破壊された皮膚から抗原(免疫反応を引きおこす物質)が侵入して,最終的にアレルギー性皮膚炎が発病するという流れだ。
 今回の発見は,AhRやアルテミンを標的とした,新たな治療薬開発につながると期待されている。

2017年01月04日

巨大な谷のなぞ ●Geophysical Research Letters 2016年11月16日号

水星では地球とは別のしくみで巨大な地溝帯ができているのかもしれない。
 NASAの水星探査機「メッセンジャー」は,水星の南半球に巨大な谷を発見した。この谷は,長さ約1000キロメートル,最大幅約400キロメートルと,とてつもない大きさだった。
 地球にも,アフリカ大陸の東側にある「大地溝帯」など,巨大な谷が存在する。地球の場合,いくつもの「プレート」の運動の結果,地形が隆起するなどして地溝帯がつくられる。メッセンジャー計画のワッターズ主任研究員によると,一枚のプレートでできている水星の谷は,地球とはことなるしくみでできたものだという。
 現在,水星は「冷却期」にある。物体は冷えると小さくなろうとする。水星がちぢむ力に耐え切れなくなると,亀裂が生じる。この亀裂が断層として上下にずれることで,高低差ができる。水星の表面では,このようにして隆起した地形が複雑に重なりあうことで,部分的に周囲よりも低い谷のような地形ができたと考えられる。

2016年12月30日

急冷してつくる電子材料 ●Physical Review Letters  2016年11月8日号

高温にしたのち,急速に冷やすことで単層グラフェンの品質向上に成功した。
 「グラフェン」とは,炭素原子が蜂の巣のような六角形の格子状に並んだ,原子1個分の厚みしかもたない物質だ。ひっぱってもこわれにくい強さをもち,電気をよく流すことから,次世代の電子材料として注目されている。炭化ケイ素の板を加熱して,その表面にグラフェンをつくる手法は,容易である一方で,電気的な性能が劣化する問題を抱えていた。
 グラフェンは,ほかの多くの物質とは正反対の,冷やすと膨張する性質をもっている。この性質を利用して,名古屋大学のバオ博士らは,高品質なグラフェンをつくることに成功した。博士らは,炭化ケイ素の板を900℃に加熱したのち,マイナス196℃まで急冷した。すると,グラフェンが膨張する一方で,炭化ケイ素が収縮することにより,非常に均一な単層グラフェンが切りはなされた。
 この新たな手法により,高品質なグラフェンをより手軽に生産できるようになるかもしれない。

2016年12月28日

歯の抜けかわりの進化 ●nature 2016年11月10日号

約4億年前の魚に,ヒトと同様の,歯が抜けかわるしくみがあったかもしれない。
 ヒトの歯は成長にともなって,乳歯が抜けて永久歯が生えてくる。歯の抜けかわりは,多くの魚類でもおきることがわかっている。そのため,歯が抜けかわるしくみの進化を解明するには,魚類の歯を調べることが役立つ。
 スウェーデン,ウプサラ大学のチェン博士らは,4億2400万年前に生息していた魚類の祖先「アンドレオレピス」の歯の化石を調べた。「放射光」とよばれる強力な光(電磁波)を歯に照射することで得られた画像をもとに,歯の3次元的な並びを再現したところ,この魚には歯をつくりだす「歯堤」という組織が見られなかった。さらに,この魚の成長にともなう歯の変化を検証したところ,歯の根元の組織が分解されることによって,その上にある歯が抜けかわるしくみがあったと考えられた。
 このしくみは,ヒトの歯が抜けかわるしくみと同様のものだ。これは,魚類の歯が抜けかわるしくみとしては,原始的なものだったのかもしれない。

2016年12月22日

神舟11号打ち上げ成功 ●China Academy of Space Technology News 2016年10月17日

宇宙ステーション建設に向けて,中国の二人の宇宙飛行士が宇宙に飛び立った。
 中国は現在,独自の宇宙ステーションの建設をめざしている。2016年の9月には,宇宙実験設備「天宮2号」を地球の周回軌道に打ち上げていた。さらに,10月17日,酒泉衛星発射センターから,2人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船「神舟11号」が打ち上げられた。
 神舟11号は10月19日,地球を周回している天宮2号との接続に成功した。天宮2号に乗りこんだ2人は,約1か月の間,宇宙ステーション建築のための準備を進めるとともに,カイコを使った科学実験を行う予定だ。
 今回のミッションで宇宙に滞在する期間は,中国が行ってきたミッションの中で最長だ。宇宙での滞在中は,約100種類の食事をとることができるほか,地球とのビデオ通信やメールの送受信なども行うことができるという。2人の宇宙飛行士は,11月中に中国のモンゴル自治区内に帰還する予定だ。中国の宇宙進出は確実に進歩している。

2016年12月19日

人の寿命の限界 ●nature 2016年10月13日号

人の命の限界は,どんなにがんばってもおよそ115歳なのかもしれない。
 ヒトの寿命のギネス記録は,122歳だ。医学の進歩によって,この記録を破ることは可能なのだろうか。
 アメリカ,アルバート・アインシュタイン大学のジャン博士らは,38か国から集めた死亡率の統計データを使って,ヒトの平均寿命の変化を解析した。その結果,ヒトの平均寿命が最ものびたのは20世紀初頭で,近年では寿命ののびはほとんど頭打ちとなっていることが示された。博士らはさらに,それぞれの時代でとくに長生きだった合計534人の年齢を分析した。その結果,1970年代から90年代初期までは最高年齢が急激にのびていたものの,1990年代半ば以降は最高年齢も停滞していた。
 これらの結果から,博士らはヒトの平均的な寿命の限界は,およそ115歳だろうとのべている。しかし,日本を含む一部の国ではまだわずかながら平均寿命がのびているため,一部の科学者はまだ寿命の限界を語るには早すぎると考えているようだ。

2016年12月16日

月面の新しいクレーター ●nature 2016年10月13日号

月面では,これまで考えられていたよりも多くの天体衝突がおきていたようだ。
 月面には無数のクレーターがある。これらは天体の衝突によってできたもので,小さなものほど数が多い。月面の地形がつくられた年代は,月にクレーターができる頻度から逆算される。これまでは,非常に古いクレーターの記録をもとに,月にクレーターができる頻度をモデル化していた。
 アメリカ,アリゾナ州立大学の大学院生のシュパイアラー氏らは,アポロ計画と最近の月探査で得られた月面画像を比較することで,直径2?43メートルのクレーターが新たに222個できていることを発見した。この数は,従来考えられていた月にクレーターができる頻度からの予測よりも,3割ほど多いという。
 月にクレーターが形成されると,その分,月面の地形も変化する。シュパイラー氏らによると,月の地形はこれまで考えられていた速度よりも100倍速く変化していることになるという。月のクレーター形成モデルには,修正が必要なのかもしれない。

2016年12月16日

体内でのびる人工血管 ●nature communications 2016年9月27日

コラーゲンを用いることで,移植後に体の中で成長する人工血管がつくられた。
 心臓や血管の治療法の一つに,傷ついた血管を人工血管に置きかえる方法がある。人工血管には筒状に加工した材料や,牛の肺動脈が使われる。これらの材料を子供に移植する際には,子供の成長に合わせて手術が何度も必要になるという欠点がある。
 アメリカ,ミネソタ大学のセダイン大学院生らは,筒状に加工したコラーゲンを用いた人工血管を開発した。コラーゲンをつくる細胞をガラスの筒の中で培養し,その後細胞をとかすと,コラーゲンの筒が残った。この人工血管を生後8週の仔羊の肺動脈に移植したところ,仔羊は親羊に成長した。人工血管を取りだして調べたところ,血管を構成する細胞が筒の表面で育っており,それらの細胞のはたらきで筒の直径と長さが2倍になっていた。
 今後,患者の細胞から作製したコラーゲンの筒を移植することで,体の成長とともに育つ人工血管がつくれるかもしれない。

2016年12月14日

古代巨大ザメの近縁種 ●Historical Biology電子版 2016年10月3日

約2000万年前の地層から,巨大なサメの新種の化石がみつかった。
 古代の巨大なサメはかつて海の主要な捕食者だったが,多くが絶滅した。巨大化した古代のサメの代表である「メガロドン」は,体長約15メートルにまで達したことが知られている。一方,報告されている古代のサメには小型のものも多く,巨大化の過程は明らかになっていない。
 アメリカ,デポール大学の島田賢舟博士らは,中新世初期(約2000万年前)の地層から,体長が最大7.2メートルの古代の巨大なサメの歯の化石を発見した。このサメは新種で「メガロラムナパラドクソドン」と命名された。歯の化石はアメリカ,ペルー,日本でみつかり,大きな魚をとらえるための特殊な形状をしていた。
 化石がみつかった地層の堆積物の情報から,このサメは中緯度の浅い海の沿岸部に生息していたと推定された。この巨大なサメの発見は,メガロドンの進化の過程を考えるうえで重要な意味をもつ,と博士らは考えている。

2016年12月12日

遠くの宇宙を電波で観測 ●ALMAニュース 2016年9月27日

宇宙の最深部を,アルマ望遠鏡で観測した成果が報告された。
 ハッブル宇宙望遠鏡を用いた長時間観測によって,非常に遠方の宇宙(過去の宇宙)のようすが明らかになってきた。宇宙の最深部に「ハッブル・ウルトラディープフィールド」とよばれる領域がある。今回アメリカ,カリフォルニアで開催された国際研究会で,この領域をチリの「アルマ望遠鏡」で観測した成果が報告された。
 アルマ望遠鏡は,電波による観測を行うことで,冷たいガス(星の材料)の存在を探ることができる。今回の観測で,現在から100億年前までは,昔にさかのぼるほど(遠くの宇宙ほど)冷たいガスの量が多いことがわかった。100億年前の宇宙は星形成が最も活発な時代だったことが知られている。そのため,冷たいガスの量の変化から,宇宙における星形成の歴史を知ることができる。
 今後,観測をつづけることで,宇宙の星形成や銀河形成の歴史を明らかにできる,と観測グループは考えている。

2016年12月09日

角膜の幹細胞はやわらかい ●Biophysical Journal 2016年10月18日号

細胞のかたさを調べることで,幹細胞をみつけだすことができるかもしれない。
 アメリカでは,遺伝や化学物質などの影響で,毎年100万人ほどに視力障害が生じる。その原因は,眼の「角膜」を保つための細胞を供給する「LSC」という幹細胞の減少にあるとされている。
 近年,角膜移植の技術が向上し,LSCを含む角膜を移植すれば視力の回復が望めるようになった。しかし,移植する角膜に十分量のLSCがなければ,十分な回復はみこめない。LSCの特徴が十分明らかになっていないため,ドナーの角膜が移植にふさわしいものかどうか調べられなかった。
 アメリカ,ジョージア工科大学のボンジョルノ博士らは,LSCのかたさに注目した。LSCのかたさを計測すると,ほかの細胞にくらべてやわらかいことがわかった。
 今回の手法では,一つの細胞のかたさの計測に時間がかかる。今後,計測時間が短くなれば,LSCを多く含む移植に適した角膜を簡単に判定する手法として利用できるかもしれない。

2016年12月07日

形が変わる時間を調整 ●nature communications 2016年9月27日

一定時間が経過するとみずからの形状を変える材料が開発された。
 材料の形状を変えるには,外部から力をかけたり,光や熱などの物理的な刺激を加える必要がある。基本的に刺激なしに材料の形状を変えることはむずかしい。
 アメリカ,ノースカロライナ大学のフー博士らは,一定の時間が経過すると外部刺激なしで自動的に形状が変化する,これまでにない高分子材料の開発に成功した。この材料の形状変化には,「不変結合」と「一時結合」という2種類の結合が関係しているという。
 一時結合は時間が経過すると外部からの刺激なしに不変結合へと変化する。このときにかかる時間は,一時結合の強さに応じて決まる。博士らは,高分子の一時結合の強さを調節することで,任意の時間が経過したときに自動的に形状が変わる高分子材料を作成することに成功した。
 この成果は,服用したあと,目的の部位に達したころに化学物質を放出するような薬の開発などへの応用が期待される。

2016年12月05日

細菌が生む天然資源 ●Science 2016年10月14日号

地中から,石炭を原料にメタンをつくりだす細菌がみつかった。
 近年注目されている天然資源に,「コールベッドメタン」がある。石炭層の中に含まれる,メタンを主成分とする天然ガスだ。このメタンが石炭の中でどのようにしてつくられるのかは不明だった。
 産業技術総合研究所の眞弓大介博士らは,山形県の地中深くから土を採取し,そこに生息する細菌を9か月培養した。すると,「AmaM」と「ZC-1」という細菌がメタンを生成していることがわかった。メタンの生成は,細かく砕いた石炭を含む培地にこれらの細菌をまいた際にも確認された。そこで,石炭に含まれている,植物由来の化合物を細菌にあたえたところ,化合物を原料にメタンを生成していることがわかった。コールベッドメタンは,細菌によって,石炭からつくられているのかもしれない。
 発見された細菌は,深海の堆積物中にも生息している可能性がある。それらは地球全体の天然資源の生産にかかわっているかもしれない,と博士らはのべている。

2016年12月03日

しっぽからできた卵子 ●nature電子版 2016年10月17日

皮膚の細胞からつくったiPS細胞を培養して,卵子をつくることに成功した。
 雌の生殖細胞は非常に複雑な過程を経て卵子となる。あらゆる細胞に分化できる細胞である「iPS細胞」を培養して卵子をつくることは,再生医療において重要な目標だった。しかし,これまで実験動物でさえ成功していなかった。
 九州大学の林克彦教授らは,成体のマウスのしっぽにある皮膚由来のiPS細胞から,培養皿上で卵子を作製することに成功した。それ以前の研究では,iPS細胞から「始原生殖細胞」という卵子の前段階の細胞をつくり,その細胞を子宮に移植することで卵子をつくることしかできていなかった。今回は,iPS細胞の培養方法を再検討し,体外での培養のみで卵子をつくることに成功した。
 林博士らは,培養して得られた卵子を体外受精させて,健常なマウスをつくることにも成功した。今後,卵子の形成に関する遺伝子の機能解析や,受精後の細胞のようすの研究など,発生生物学のさらなる進歩が期待される。

2016年12月01日

なぞのX線源の正体 ●nature 2016年10月20日号

強いX線の増光をおこした二つのX線源は,未知のブラックホールの新たな候補か。
 天体の中には一時的に強いX線をはなつものがある。地球から約3800万光年先の銀河「NGC4697」の近くで,X線の増光が見られた。その光度は100ワット電球1030個分に相当するほど高く,増光時間はわずか1分だった。
 アメリカ,アラバマ大学のイアウィン博士らは,過去に取得された70個の銀河のX線データを用いて,このX線源と同じような現象がないか調べた。その結果,同様の天体が二つ発見された。一つは球状星団に,もう一つは小さな矮小銀河に付随しており,NGC4697の近くで見られたX線の増光とくらべて明るかった。発見された二つの天体は,「中間質量ブラックホール」である可能性が考えられた。
 中間質量ブラックホールは,太陽より10倍ほど重い「恒星質量ブラックホール」と数100万倍以上重い「超大質量ブラックホール」の間をうめる存在とされている。今回の成果は,その正体解明の糸口になるかもしれない。

2016年11月29日

巨大な雪玉が出現 ●The Siberian Times 2016年11月4日

シベリア北部の村の海岸で,無数の巨大な雪玉が発見された。
 2016年10月末,シベリア北部の海に近い「ニダ」という村で,奇妙な自然現象が目撃された。何千個もの巨大な雪玉が海岸にちらばっていたのだ。その大きさはさまざまで,テニスボールほどの大きさのものから,大きいものではバレーボールほどの大きさにまでおよんでいた。
 The Siberian Times誌によると,これはまれにおきる自然現象だという(ロシア,北極南極研究所の報道官であるリセンコフ氏による見解)。今回の場合は,海面が上昇して海水が霜に接することで海水温が下がり,海岸が氷でおおわれた。その後,水が後退して氷のみが残され,ぬれた砂浜を氷が転がることで巨大な雪玉ができたのだろう,と村の行政局の職員は考えている。
 The Siberian Times誌によると,こうした現象は今回はじめてこの地域で見られたようだが,同様の現象は過去にアメリカのミシガン湖でも確認されたという。

2016年11月27日

巻物を開かずに解読 ●Science Advances 2016年9月21日号

劣化のはげしい巻物に記された文字を,CTスキャンを利用して解読できた。
 古い劣化した巻物はこわれやすいため,開いてそこに記されている文字を解読することはむずかしい。近年コンピューターの技術により,巻物を開くことなく,中に書いてある文字を解読する試みがなされている。
 アメリカ,ケンタッキー大学のシールズ博士らは,イスラエルで発見された紀元300年ごろの巻物を,CTスキャンを用いて読みとった。巻物は獣皮製で劣化がはげしかったため,開かずに保管されていた。博士らはCTスキャンしたデータを用いて,あたかも巻物を開いたかのような状態に再現した。記されていた古代文字を解読したところ,文字は旧約聖書の『レビ記』の一節であり,巻物は紀元前3世紀?紀元2世紀の『死海文書』の最古級の写本であるという。
 今回用いられた手法は,損傷した棺におさめられた,劣化した文書などに記された文字を非破壊で読みとるのに活用できる,と博士らは考えている。

2016年11月26日

感覚を取りもどせ! ●Science Translational Medicine 2016年10月19日号

四肢が麻痺した人の脳に電気刺激をあたえることで,細かい感覚を再現できた。
  皮膚の感覚などが麻痺すると,手足を動かすのも困難になる。運動機能を回復させるためには,神経のリハビリが必要となる。
 脳の大脳皮質内に,微小な電気刺激を加えると,触覚に関連する神経の形成が進む。実験動物では,電気刺激が神経にとってのリハビリとなり,皮膚の感覚を回復させることにつながることがわかっている。しかし,実験動物では,どの程度感覚が回復しているのか判断できなかった。
 アメリカ,ピッツバーグ大学のフレッシャー博士らは,脊髄を損傷して感覚を失ってから長期間経過した患者の脳に電極を埋めこみ,手の感触にかかわる脳の部位に電気刺激を加える治療を行った。その結果,電気刺激を受けることで,自分の手を押された感触や,どの部位に力が加えられたのかといった感覚を知覚できた。ヒトにおいても,電気刺激による神経のリハビリが,効果的にはたらくようだ。

2016年11月22日

ハート形の秘密 ●nature 電子版 2016年9月19日

冥王星にきざまれたハート形の模様は,あと10年で消えてしまうかもしれない。
 冥王星には,「スプートニク平原」と名づけられた,小天体が衝突してできるクレーターのような低地がある。この領域は,白いハート形に見えることで知られているが,白い理由は不明だった。>
 フランス,パリ第6大学のフォージェー博士らは,冥王星の大気成分であるメタンや窒素などの動きを,気候モデルを使ってシミュレーションした。大気が氷になったり,氷が蒸気に変化したりする効果を考えて計算すると,低地のスプートニク平原は周囲よりも気圧が高く,窒素の氷ができて積もりやすいことがわかった。スプートニク平原の白色は,窒素の氷の色だったのだ。>
 また,冥王星の大気の量は,この30年で3倍になった。冥王星の公転により,スプートニク平原に太陽光が当たり,窒素の氷がとけて気体になったためだと考えられる。博士らの気候モデルでは,冥王星の白いハート形は,あと10年程度で消えてしまうそうだ。

2016年11月19日

体色が語る生息環境 ●Current Biology 2016年9月26日号

恐竜の体色の濃淡が再現され,当時生活していた環境が推測された。
 動物は,その生息環境によって体色に濃淡の特徴が見られる。これは周囲の環境になじんで自分の姿を目立たなくさせる方法の一つと考えられる。絶滅した動物においても,体色をもとに生息していた環境を推測できる可能性がある。
 イギリス,ブリストル大学のヴィンサー博士らは,中国で発見された「プシッタコサウルス」という草食恐竜に着目した。うろこの化石に残されていた色素成分をもとに体色を再現したところ,恐竜のあごやほほは,暗い茶色だったことがわかった。一方,下腹部と尾は明るい茶色だった。これらの濃淡のパターンから,この恐竜は森林で生息していたと推測されるという。
 体色の濃淡のパターンは,捕食者の視覚が進化するにしたがって変化すると考えられる。絶滅した生物の体色を再現する研究が進めば,捕食者の視覚がどのように進化してきたかもわかるようになるかもしれない。

2016年11月15日

夢の鎮痛剤? ●nature 2016年9月8日号

モルヒネと同様の鎮痛効果をもちつつ,副作用がほとんどない物質を発見した。
 「モルヒネ」は,ケシを原料として合成される化合物で,強い鎮痛効果をもつ。一方で,呼吸器の機能低下や依存を引きおこす可能性があるなど,副作用も強いため,諸刃の剣だ。鎮痛効果と副作用をそれぞれもたらすしくみはわかっていたものの,鎮痛効果のみをもつ物質はみつかっていなかった。
 アメリカ,カリフォルニア大学サンフランシスコ校のショイシェット博士らは,モルヒネが作用する受容体(外部からの刺激を受け取るタンパク質)と,300万個以上の分子の立体構造をコンピューターによって解析した。その結果をもとに,鎮痛効果のみを発揮し,副作用を引きおこさない物質,「PZM21」を発見した。PZM21の効果をマウスで検証したところ,モルヒネと同様の鎮痛効果を示したが,呼吸や運動機能の低下や,依存症などの副作用はおきなかったという。
 今回の成果をもとにした,ヒトへも投与可能な,副作用の小さい鎮痛剤の開発が期待される。

2016年11月12日

11億個超の星の地図 ●ESA News 2016年9月14日

星の位置を精密に測定する衛星「ガイア」による最初の観測成果が公開された。
 ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は2014年に運用を開始した人工衛星「ガイア」の最初の観測成果を公開した。ガイアは,私たちの住む天の川銀河と近くの銀河にある星の位置を精密に測定できる望遠鏡を搭載している。ガイアの目的は,天の川銀河付近にある星々の3次元的な地図をつくることだ。>
 公開されたデータには,11億4200万個もの星の位置と明るさがしるされている。さらにこれらの星のうち,200万個をこえる星について地球からの距離や動きが明らかになった。1989年に打ち上げられた衛星「ヒッパルコス」は,ガイアと同様に星の地図づくりを行った。ヒッパルコスが作成した星の地図とくらべ,今回作成された地図は星の位置の誤差が半分になった。ガイアは今後,誤差をさらにちぢめることをめざしている。>
 ガイアの観測を引きつづき行うことにより,天の川銀河全体の星の分布や運動が明らかになることが期待される。

2016年11月09日

母乳で育つサメ ●Biology Open 2016年9月15日

ホホジロザメは,子宮から分泌される母乳で子育てをするようだ。
 人食いザメとして知られる「ホホジロザメ」は,子宮内で卵を孵化させる。そしてそのまましばらく子宮内で子供を育て,体外に出す。妊娠したホホジロザメの調査例はこれまでほとんどなく,ホホジロザメの子供が母体内で成長するくわしいようすは不明だった。
 2014年,沖縄で,全長およそ5 メートルの妊娠したホホジロザメが捕獲され,標本にされた。沖縄美ら島財団の佐藤圭一博士らがこの標本を解剖したところ,子宮の中から,孵化直後の子供が6尾みつかった。子宮の中は乳白色の液体で満たされており,液体は子宮の細胞から分泌されていた。この液体には牛乳と同様に,多量の脂質が含まれていた。また,この液体は子供の胃の中からもみつかった。つまり,ホホジロザメの子供は子宮から分泌される母乳を栄養にして育っていたのだ。
 サメの生態を解明するため,今後ほかのサメ類も調査することが重要だ,と博士らはのべている。

2016年11月04日

傷を自動的に修復 ●Royal Society Open Science 2016年9月14日

電気を利用してわずかな傷を自動で修復できる,特殊な材料がつくられた。
 生物は傷を負っても自然治癒する。一方,人工物に傷が生じても,自然に修復されることはない。しかし最近,みずからの傷を自動的に修復する,強度の高いガラス繊維でできた,おどろきの材料の開発が進んでいる。
 イギリス,バーミンガム大学のワン博士らが開発した材料には,ガラス繊維のほかに,電気を流すための金属と,傷を修復するための接着剤のような物質が埋めこまれている。内部の金属に電気を流しつづけることで,材料の温度は一定に保たれる。そして,この材料に傷がつくと,接着剤がもれ出て,自動的に傷をふさぐのだ。
 博士らの実験では,マイナス60℃という低温環境でも,自動で傷を修復することができた。また,修復の前後で,この材料の強度には大きな差がなかった。飛行機や人工衛星など,わずかな傷が重大な事故を引きおこすようなものに利用すれば,安全性を高めることにつながるかもしれない。

2016年11月01日

水蒸気の噴出を初観測 ●NASA News 2016年9月27日

木星の衛星「エウロパ」の氷の裂け目から,水蒸気が噴出していた。
 木星には60個をこえる衛星がある。今回,NASA(アメリカ航空宇宙局)のハッブル宇宙望遠鏡によって,木星の衛星の一つである「エウロパ」から,水蒸気が噴出しているようすが確認された。
 エウロパは氷でおおわれており,内部には地球の海の2倍もの量の液体の水が存在している可能性がある。研究チームによると,今回観測された水蒸気は,地表の氷の裂け目から,エウロパの上空約200キロメートルまで噴きだしていたという。
 エウロパは太陽系の中でも生命が存在する可能性が高いと考えられている天体の一つだ。生命探査の点から,エウロパに存在する水の調査は重要とされている。しかし,表面の氷の厚みがわからないため,氷に穴を開けて内部の水を得ることは非常に困難だとされてきた。エウロパ内の水が水蒸気として噴出しているなら,エウロパの水の調査は思っていた以上に簡単にできるかもしれない。

2016年10月28日

世界最古の釣り針 ●PNAS 2016年10月4日号

沖縄では,約3万5000年前には人類の居住がはじまっていたようだ。
 漁業や航海などの海洋での活動は,人類が居住地域を広げていくための重要な要因の一つだ。人類は約5万年前以降(後期旧石器時代)に積極的な海洋進出をはじめたとされるが,どのように海洋進出したのか,詳細は不明だった。
 沖縄県立博物館・美術館の藤田祐樹博士らは,沖縄県南部にあるサキタリ洞遺跡の発掘調査を行った。その結果,この遺跡では約3万5000年前から人類が居住していたことがわかった。洞窟の住人は,石のかわりに,豊富に入手できた貝を材料としてさまざまな道具をつくっていた。その中の一つに釣り針があり,約2万3000年前のものだと推定された。これは現在みつかっている中で,世界最古の釣り針だという。
 今回の発見とすでに発見されていた海洋進出の証拠を合わせて考察すると,約3万5000年前から3万年前までに,現代人の祖先は沖縄周辺を含めた西太平洋を広く航海し,釣りなどをはじめていたようだ,と博士らはのべている。

2016年10月25日

喘息のしくみ ●Science Immunology   2016年9月16日

発作を引きおこす際にかぎとなるタンパク質が発見された。
 喘息は,気管支で炎症がおきることで気道がふさがり,呼吸困難などを引きおこす病気だ。喘息の発作の原因は,血管から出た免疫細胞が,気管支で炎症をおこすためだということが知られている。これまで免疫細胞が血管から出るしくみがわかっておらず,根本的な治療はむずかしかった。
 千葉大学の林崎浩史博士らは,免疫細胞が血管の外に出る際に重要な役割をもつ,「Myl9」というタンパク質を発見した。Myl9は,血管の内側に付着して網目のような構造をつくり,血液中の免疫細胞が血管外へ出るのを助けていたという。Myl9のはたらきを抑制する分子(抗体)を喘息をもつマウスに投与したところ,免疫細胞が血管の外に出ていくことがなくなり,気管支での炎症はおきなくなった。
 博士らは,本成果はヒトの喘息の画期的な治療法につながる可能性があると考え,実用化へ向けて研究を進めている。

2016年10月23日

コケが酸素供給? ●PNAS 2016年8月30日号

地球の大気中の酸素濃度を上昇させたのは,コケのような植物かもしれない。
 地球の大気中に酸素が発生したのは約24億年前だとされ,その後,酸素はふえていった。大気中の酸素濃度が現在と同程度になった時期については,陸生動物が出現したとされる5億年前以前とする説や,森林が発達した3億8000万年前以降とする説などがあった。
 イギリス,エクセター大学のレントン博士らは,コンピューターシミュレーションによって,約4億7000万年前から地表をおおっていた,コケのような原始的な植物が酸素濃度の上昇に貢献した可能性を検証した。その結果,コケのような植物が増殖したことで,約4億4500万年前までには,現在地球に存在する酸素の約30%を生みだすことが可能だったことを突き止めた。シミュレーションによると,大気の酸素濃度が現在と同程度まで上昇したのは約4億年前である可能性が高いという。
 コケによって酸素濃度の高い大気がもたらされ,維持されることで,その後の動物の進化が可能になったのかもしれない。

2016年10月20日

肥満と糖尿病の関係 ●Cell Metabolism 2016年8月9日号

肥満による糖尿病は,大腸でおきる炎症が原因となっていることがわかった。
 糖尿病には主に,血糖値を調整するホルモンである「インスリン」が体内で分泌されなくなる1型と,インスリンは分泌されるがその効きが悪くなる2型がある。2型糖尿病は肥満をきっかけに発症することが多く,腸内環境の変化が発症にかかわると考えられていた。
 慶應義塾大学の川野義長博士らは,肥満のマウスでは,炎症を引きおこす細胞の一種である「マクロファージ」が大腸に集まることで,大腸で炎症がおきていることを突き止めた。このマウスではインスリンが効きにくくなっていたという。さらに博士らは,大腸の炎症とインスリンの効きやすさの関係を調べるため,遺伝子改変によってマクロファージが大腸に集まらないようにしたマウスを作製した。すると,肥満になっても大腸の炎症はみられず,インスリンが効きにくくなることはなかった。
 ヒトでも,大腸へのマクロファージの集積をおさえることで,2型糖尿病を防げるかもしれない。

2016年10月17日

自転周期が環境を決める ●Geophysical Research Letters 2016年8月29日

誕生直後の自転周期によっては,金星は地球とよく似た環境になっていたかもしれない。
 金星と地球は,大きさや形がよく似た惑星だ。現在の大気成分には大きなちがいがあるが,金星が形成されたころの大気成分が地球と似ていても不思議ではない。アメリカ,ゴダード宇宙科学研究所のウェイ博士らは,過去の金星の大気成分が地球と似ていた場合,現在のような差がどのように生じるのかをシミュレーションした。
 博士らの計算によると,金星の誕生直後の自転周期(1日の長さ)が,地球の時間で16日よりも短かった場合,金星は現在のような環境になるという。惑星が太陽に温められると,表面に存在する液体が蒸発し,雲ができる。雲は太陽光を反射し,惑星が過剰に温まるのを防ぐ。金星の自転周期が16日より短いと,この雲が維持されずに,金星が過剰に温まってしまう。現在の金星の自転周期は,約243日だ。金星の自転周期が誕生直後からこれほど長ければ,金星は地球のような環境になっていたのかもしれない。

2016年10月14日

人類最古のがん ●South African Journal of Science 2016年7・8月号

南アフリカで発見された約180万~160万年前の人骨から,がんがみつかった。
 現代のがん(悪性腫瘍)は喫煙や飲酒,日焼け,肥満などに原因があるとされることが多い。古代のヒトからがんの痕跡がみつかることはまれであり,これまで約78万~12万年前のヒトから数例がみつかっているだけだ。また,現代以前の人類にみられる腫瘍は,良性である(がんではない)場合が多いと考えられてきた。
 南アフリカ,ウィットウォーターズランド大学のオデス博士らは,南アフリカの洞窟遺跡でみつかった約180万~160万年前の人骨を,現代のヒトの骨肉腫(骨のがん)がある骨と比較した。すると,洞窟でみつかった人骨にも骨肉腫があることがわかった。これは今までで最古のがんの記録だ。骨肉腫は生活習慣と関連したものではなく,若い年齢でおきやすい種類のがんだという。
 博士らは,これまでいわれてきたような,がんは現代に特有の病気であるという仮説は見直すべきだ,とのべている。

2016年10月11日

ケレスの中身が見えてきた ●nature 電子版 2016年8月3日

小惑星探査機ドーンの観測データから,ケレスの内部構造が推定された。
 小惑星「ケレス」は,火星と木星の間に広がる小惑星帯で最大の天体だ。アメリカ,ジェット推進研究所のパーク博士らは,ケレスを周回している小惑星探査機「ドーン」のデータを使って,ケレスの内部構造を分析した。ケレスは,自転の影響で赤道方向にふくらんだ形をしている。そのため,重力も場所によってことなる。博士らはこの重力の差を利用して,内部の密度分布を計算した。
 分析の結果,ケレスの中心付近は密度が高くなっており,その成分は地球に落ちてくる小惑星由来の隕石と似ていることがわかった。一方,表面付近の構造にはすき間が多かった。博士らによると,ケレスの表面の土の中には氷の粒が多く含まれており,その分密度が低くなっているのかもしれないという。
 天体の内部構造は,その天体の進化の歴史で決まる。今後の解析で,ケレスや太陽系の歴史が明らかになることが期待される。

2016年10月08日

裂ける瞬間を観察 ●Physical Review Letters 2016年8月15日号

合成繊維の材料は,すばやくのばすといつもちがう場所から裂けていく。
 合成繊維は,材料となる高分子をとかした「高分子溶液」を細い穴から押しだして糸状にすることでつくられる。このときに,高分子溶液をすばやくのばすとすぐにかたくなって裂けてしまうが,ゆっくりのばすとやわらかいままのびていく。
 デンマーク工科大学のファン博士らは,糸状にのばした高分子溶液が裂けるようすを高速度カメラで撮影した。画像を解析すると,高分子溶液が裂ける瞬間には,複数の亀裂が同時に広がっていることがわかった。また,同じ速度で高分子溶液をのばすと,いつも同じタイミングで裂けた。しかし,最初に亀裂が生じる場所は毎回ばらばらだった。博士らは,高分子溶液がのびたときに,一部がかたく,もろくなり,裂けやすくなったのだと考えている。
 物体が裂けるしくみを知ることは,材料の設計にとって重要だ。この研究は,強靱な繊維の開発などに生かせるかもしれない。

2016年10月05日

太陽光で殺菌 ●nature nanotechnology 2016年8月15日

太陽光を吸収し,飲料水を効率よく殺菌する新しい材料がつくられた。
 私たちがふだん口にする飲み水は殺菌してある。ペットボトルに入った水は加熱殺菌されているものが多いが,中には太陽光を使って殺菌されているものもある。
 太陽光に含まれる光の成分の中で,殺菌作用をもっているのは紫外線だけだ。しかし,紫外線は太陽光のエネルギーの約4%でしかないため,太陽光を使って殺菌しようとしても,効率が悪かった。
 アメリカ,スタンフォード大学のリュー博士らは,銅でおおった二硫化モリブデン(MoS2)の薄膜を層状に重ねた材料を開発した。この材料は,太陽光に含まれる可視光の大半を吸収し,そのエネルギーを使って水から活性酸素をつくる。活性酸素には強い殺菌効果がある。細菌を含む水にこの材料を入れて太陽光を当てると,わずか20分程度で水に含まれている細菌の99.999%以上を殺すことができた。この材料は,将来,飲用水を確保するための重要な技術となるかもしれない。

2016年10月02日

明るさが激変する星 ●nature 電子版 2016年8月17日

劇的に明るさが変化する天体において,理論的に予測された現象が確認された。
 急激に明るくなる天体の一つに「激変星」がある。激変星は,恒星と「白色矮星」がたがいの周囲をまわる「連星」であることが多い。白色矮星は,死をむかえた恒星のあとに残る,中心核だ。
 白色矮星は周囲の恒星からガスを奪って高密度になり,爆発的な核反応をおこして増光する。増光から1000年?100万年ほどたつと,白色矮星の周囲のガスが減少し暗くなる。激変星の急激な増光は,1万年?100万年おきにくりかえされると予測されている。
 ポーランド,ワルシャワ大学のプシエメク博士らは,「V1213 Cen」という連星で生じた爆発的な増光を観測した。すると,増光の前にはわずかに明るさが変化していた。恒星からのガス供給が不安定になることで,このような現象が生じることが予測されていた。激変星について理論的に予測された現象が確認されたのは今回がはじめてだ。今後,激変星の検証が進むことが期待される。

2016年09月29日

近赤外線でがん退治 ●Science Translational Medicine 2016年8月17日

近赤外線を当てることで,免疫によるがん細胞への攻撃が活性化された。
 がんの治療法の一つに,「免疫療法」がある。これは,ヒトが本来もつ免疫のしくみを利用してがんの退治をめざす治療法だ。従来の免疫療法では全身で免疫を活性化させるため,正常な細胞も攻撃してしまう可能性があった。アメリカ,国立衛生研究所の小林久隆博士らは,近赤外線を用いて,がん細胞のまわりでのみ免疫を活性化させる方法を発表した。
 がん細胞のまわりでは,「制御性T細胞」が免疫のはたらきを抑制し,結果的にがん細胞の増殖を助長している。博士らは,この制御性T細胞と結びつき,近赤外線の刺激で制御性T細胞をこわすはたらきをもつ物質を作製した。これをマウスに投与し,がんに近赤外線を当てると,周囲の制御性T細胞が減少した。その結果,免疫によってがんが攻撃され,がん細胞の増殖が抑制されたという。
 今回の手法は,副作用の少ない新たながんの免疫療法になりうる,と博士らはのべている。

2016年09月26日

400年生きたサメ ●Science 2016年8月12日号

ニシオンデンザメは,脊椎動物で最も長寿だということがわかった。
 ニシオンデンザメは北大西洋に生息する,体長5メートルにおよぶ大型のサメだ。体の大きさのわりに成長が遅いため,長寿なのではないかと考えられていた。通常,魚の年齢を測定する際には,成長とともに耳石や骨などにカルシウムが蓄積することでできる,木の年輪のようなリングを観察する。だが,骨格が軟骨からなるサメは,このような組織をもたないため,年齢測定が困難だった。
 デンマーク,コペンハーゲン大学のニールセン博士らは,ニシオンデンザメの目の水晶体を用いて年齢測定を行った。水晶体の中には,時間の経過とともに一定の割合でその量が減少していく特殊な炭素原子(放射性同位体)がわずかに含まれている。その量を調べることで年齢がわかるのだ。この方法で28尾の雌の年齢を調べると,最も大きな個体の年齢はおよそ392歳だったという。これまで211歳のホッキョククジラが最も長寿な脊椎動物とされていたが,今回その記録が塗りかえられた。

2016年09月25日

筋肉再生のしくみ ●PLoS Genetics電子版 2016年7月14日

筋肉の再生時には,DNAがもつ情報を制御するしくみが重要となるようだ。
 筋肉に負荷がかかると筋肉の繊維は損傷し,その後,それを補うために新たな筋繊維がつくられる。このような筋肉の再生には,生物がもつ遺伝子の情報を制御する「DNAメチル化」というしくみが重要だということが知られている。だが,筋肉再生との具体的な関係は解明されていなかった。
 今回東京医科歯科大学の浅原弘嗣博士らは,DNAメチル化をつかさどる遺伝子の一つである「Dnmt3a」を筋肉の細胞からなくしたマウスをつくり,解析した。その結果,このマウスは筋肉の損傷後の再生能力がいちじるしく低くなっていることがわかった。これは,Dnmt3aをもたないことで,筋肉の再生時にDNAメチル化がうまく行われず,筋肉のもととなる「筋サテライト細胞」の増殖が抑制されていたためだという。
 この成果を応用すれば,加齢や寝たきりによる筋肉量の低下をおさえる薬が開発できるかもしれない,と博士らはのべている。